九十歳の掛井さんは、マエストロのメチエを手にしながらも、それを運動の制約とはしないで、さらに新しいことに挑戦し続ける稀有の作家です。ブロンズや鉄という不服従の素材を用いながら、しなやかな可塑性を造形する秘法は、ほかに例を見ないものです。
「生まれながらの描線の確かさ、大人でありながら子供の描線を有していること」と評された天性の資質が、老いることのない創造力の源泉となっているのだと思います。厖大な作品群は、生きることの讃歌でありながら、死者を哀悼するエレジーであり、権力というものへのプロテストでもあるという、重層的なテクストとして解読できます。
なににも囚われることのない奔放なまでの変貌ぶりは、いつも美術界を震撼させてきました。その果敢さ、その清冽なポエジー、その実存的な哲学、その造形の自由・・・・、コロナ禍で打ちひしがれた心を、根底から揺さぶり、奮い立たせてくれることを願って企画した展覧会です。
作品はレジデンスエリア、レストランμのほか、スイートヴィラ客室内の展示空間「燦架」でご鑑賞いただけます。
会期:2021年6月4日(金)~2022年5月31日(火)
※スイートヴィラ客室内展示のご観覧はご宿泊者のみとさせて頂きます。
※レジデンスエリアの中庭では、「アジアの女」(第42回新制作展・静岡県立美術館出展作)などの本格的なブロンズ作品を自由にご覧いただけます。
※アートビオトープオンラインショップでは、「身に着ける彫刻」とも言える掛井氏のアクセサリーシリーズを販売しています。一つずつ制作された本格的な造形は、額装などでもお楽しみ頂けます。https://artbiotop.shop/collections/kakei
掛井五郎 Goro Kakei
1930年静岡生まれ。東京芸術大学彫刻専攻科卒。新制作協会を中心に活動して、1982年に高村光太郎賞、92年に中原悌二郎賞受賞などを受賞しました。驚くべき創造力で、素材も、モチーフも、テーマも、自由に超えてゆく作品を生み出して、今もその手は止まりません。