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伊藤岳

ガラス作家・伊藤岳プログラム
AIRディレクター 富田勝彦

アート・ビオトープ那須での「アーティスト・イン・レジデンス公募プログラム」。二人目の作家は、オランダ、ベルギー、ポルトガル、ドイツとヨーロッパ各地でのAIR経験を持つ東京在住のガラス作家・伊藤岳氏である。
AIRとして日が浅い我がレジデンス・スタッフにも、得るものがあると期待してのプログラムであった。また、応募要項の制作したい作品として「近隣児童とのコラボレーションした作品つくり」を上げていて、地元住民との友好な関係作りにも有効と考えていた。そんな私の思惑の中で、興味深くプログラムが開始された。まずは、私も同行して近隣の小学校、幼稚園を一緒に訪問し、児童に蜜蝋による制作依頼から始まった。数日後、蜜蝋作品を回収し、その作品から型を取りガラス作品にするというコラボレーションである。この訪問で各学校長にお会いし、改めて、近隣環境における児童の状況を知ることになり、レジデンス・スタッフ以上に、私が勉強になったのだ。

ワークショップ(以下WS)も、作品同様、子供を対象にしようということで内容を決定した。“親子で作る”をテーマに「子供の想像力がガラスになる」「子供の手をガラスでつくる」と内容を変えて2回開催された。親の参加で、小さい子から小学児童まで幅広く制作できるというものになり、完成した作品も家族の共同制作、幼少時の記念といった思い出になるものになった。作業中も子供たちの間に入って、話しながら作業する伊藤のキャラクター、人柄が微笑ましいWSになり、思った以上の成果であった。プログラム修了時、成果として寄贈された作品は、近隣児童との“絆を連想させる”コラボ作品。これは、公道に面したアート・ビオトープの植え込みに恒久展示された。もう1点、中庭で夜間ライトアップされる「金毛九尾の狐の住処」そんなガラスの家である。そして、子供好きの伊藤らしい「三輪車」が4台である。AIR作家として、初めて地元児童とコラボした作品が、公道に面した場所に展示され、アート・ビオトープと地元住民との友好を記念するプログラムになった。

 


1976 秋田生まれ。
1999 ガラスアーティストグループ『Sandbox』設立。
2001 東京ガラス工芸研究所研究科修了。
2004 リートヘルトアカデミーガラス科卒業。
2009 東京都立城東職業能力開発センター溶接科修了。
オランダ、ベルギー、ドイツ、ポルトガルなどで作家活動を 行なう。各地にて参加型の展示を展開中。