修了して
86B210 鈴木富美恵/ 井口桂子
那須高原の爽やかな自然に包まれての制作。滞在制作帰還、1ヶ月。いわゆる日常と自分を切り離し、自然に身体を預けての制作は、今気づかなかった感覚や、物事の見方を教えてくれるものでした。普段私達は、現代社会に生きる自分がふと感じる疑問や,孤独や、藤、そのようなものをテーマにして作品を作ってきました。今回も、兼ねてよりやってみたかった粘土(陶芸工房、ガラス工房もあり,制作環境は整っている)を用いて、チェコのクレイアニメの様な不条理な世界をダンスの世界でいかに表現出来るか、自在に顔が変わる粘土+身体で何が生まれるか、を実験しにいったのです。
震災後、よけいに自然の美しさや地域コミュニティーの重要さ、その大きな力、また物事の本質とは何か、ということに直面する事が多くなり、人間力とは何か、地球の再精力の事等、滞在中にレクチャー等に参加出来た事もあり、人間の本来のパワーを取り戻す事。食生活も本当のものを食べる。五感を研ぎ澄ます。美しいものを見たり聞いたりする。という、まさにその環境のただ中で、また,森の中の連鎖、そのようなものから、全ては呼応すること、連鎖する事、なのだと感じ、そこから作品モチーフを組み立てていきました。その場所でなければ生まれなかった,モチーフでした。
物事の本質、それは、私達もダンスを媒体として模索していること、今回のAIR滞在制作中は、それを全ての角度から考えて構築する機会となりました。二期クラブの菜園でとれた野菜のあまりの美味しさに吃驚したり、国産米麹屋さんのちゃんとした味と醤油がどんなに素晴らしいか、など、食の面からも考えさせられました。全ては、本質とは何かにつきるのだと。改めて気づかされた日々でした。
1ヶ月と短い滞在制作でしたが、私達の中に杭の様に強く打ち込まれた、そんな貴重な体験でした。他の作家との交流、またそこから新たに映像プロジェクトが進行したり、これも呼応と,連鎖なのだと。これからも素晴らしい連鎖が続く様、活動していこうと思います。
90年代より活動を開始し、97年の渡仏をきっかけに06~08年はヨーロッパを拠点に活動。2010年末にはオーストラリアでのヨガ・キャンプに参加し、東日本大震災後、東京青山のスパイラルにおいて震災復興チャリティーイベント「アートの力」でパフォーマンスを行う。劇場、クラブ、ストリート、ギャラリーなど場所を選ばない活動を国内外で続けている前衛舞踊デュオ。