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金恵貞

陶作家・金恵貞プログラム
NPOアート・ビオトープ 木下澄夫

韓国出身の陶作家金恵貞さんは、NPO法人アート・ビオトープでの「アーティスト・イン・レジデンス」プログラムのアーティストとして、2009年7月から8月までアート・ビオトープ那須に来ていただきました。2000年に渡英、7年間の制作活動をはじめ、好奇心旺盛で、旅や異文化体験が大好きな金さんは、世界各地で活躍され、多くのファンの方がいらっしゃいます。滞在中、「山のシューレ2009」の2日間にわたって行われた「ドローイングワークショップ 五感で描く―求心力の旅」は、金さんの創作の原点を伺いしることができるオリジナルなワークショップでした。
初日は、自分の宝物を見つけるため、森の探検から始まり、その宝物を通して森をイメージし、水と粘土、墨汁を画材に、フロアに置かれたロール紙に描き出します。次のセッションでは、登場したダンサーの踊りに触発され、自分の手以外に体全体にリズムにのって、自由にロール紙に表現。まさにドローイングの原点を実感した一日でした。
2日目は、二期倶楽部本館前の池で素足になり、石の上に座り、目を閉じて水の音、風の音などに感覚を澄ませます。そして足の裏の視界を広げ、意識は自分の内側に向けながら石の上を歩きます。次に男女が背中あわせに立ち「男女の性、陰と陽、プラスとマイナス」に触れながら「私たちのなかには、固いものや柔らかいもの、太いものや細いもの、強いものや脆いものなどの性質。それらを探しながら、画材の使い方、可能性を探ってゆきます。」スポンジ、粘土、水を使い、手の平、甲、節を試し、量感を大切にして個々の性質を発見しながらドローイングを開始。前日と同じようにダンサーが踊り、それに合わせてポーズを変えてドローイングを続けてゆきます。「絵を描くことはダンス。踊りが判らないと思わないで、紙に描くことを身体のなかで探せば、踊りになります」(金恵貞)

2日間にわたるワークショップは「ダンスの手法を使った、彼女のドローイングのワークショップは、瞑想的かつ、センシュアルな官能に満ちて、忘れ難いものでした」(武蔵野美術大学教授 新見隆)。
那須での創作活動では、粘土や釉薬を何種類か取りえて、素材のテストを行い、ここで見つけた粘土の性質や釉薬の特徴、焼成における適性を活かした作品を、2か月という短い滞在期間の中で残してくれました。

 


1969 東京生まれ。
1999 東京藝術大学大学院(工芸科陶芸専攻)博士課程卒業。
2000 渡英。以後7年間、英国で作家活動。 日本・英国・米国などで展覧会多数。

主な受賞 London、Chelsea Crafts Fair にてEvening Standard 社賞(2005)